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トレイルランナー 内坂庸夫 x 大瀬和文
身代わりだった「めざせ世界一」

陸上部出身の読者代表

内坂: 2009年にウルトラトレイルの最高峰と言われる《UTMB》に取材とサポートを兼ねて行ったわけ。その頃は「100マイルを走る」「夜も眠らないで走り続ける」、なにそれ?って時代。標高2000m級の山々を一昼夜も走り続けりゃ、筋肉痛や捻挫、低体温症やハンガーノックなんて当たり前、予期せぬ出来事が次々に起きる、泣き笑いのドラマが生まれる。サポートしていればその物語の最初から最後まで全部読めてしまう。うわあ、おもしろいなあ。何年も通っているうちに、だったら自分も走っちゃえ、ってことに。12年と13年に100kmの《CCC》を走るけど、160kmの《UTMB》は表彰台に上がるのはもちろん、完走するのさえまだまだ未熟。よおし、身代わりを立てよう、とずるいことを考えた。それが読者代表トレイルラニング「チームターザン」企画。書類審査に残り、最終面接にあらわれたひとりが東海大陸上部出身の大瀬和文。眼鏡かけてて、おとなしい、口数も少なくて地味な印象だった。「へえ、職業は看護師かあ、人に役に立つ仕事をしてるんだな。そんな人が世界トップを目ざして山を走るのって、いいかも」、そんなことから選んだよ。完全に猫をかぶってたね。

当時は大先生、いまはレース仲間

大瀬: 連載ページだからひと月に2回、先輩たちに講習を受けたり、大会に出たりするんだけど、いま思うと、すごい人たちに教わっていますよねえ。鏑木毅さんには山の走り方、山田琢也さんにポールの扱いを、小川壮太さんには急坂の上りを、松本大さんにはカッ飛び下りを教わりました。いま、そんな恩人たちと同じレースに出て、追いかけっこしているから不思議です。
内坂: その当時からスントを使って心拍トレーニングをしてるけど、レース本番のときに心拍数ってチェックしてる?
大瀬: その日そのときの体調を知るには、走り出して心拍数を見るのがいちばんだと思ってます。いつもと同じペースで走っているのに、心拍数が低ければ調子がいいってことだし、逆にいつもと同じ速度なのに心拍数が高いってことは、体調がよくない証拠。僕は心拍数を確認してペースを調整します、ウルトラは長いですから。

困った時のGPSナビゲーション

大瀬: もうひとつ、レース中に知っておきたいのは自分の位置。いま自分がどこを走っているのか? 次のエイドまでどのくらいの距離があるのか?ペース配分や水分補給、エネルギー補給にかかわる大事なデータです。それには経過時間はともかく正確な高度計機能が必要ですね。前もってレースコースのプロファイルを覚えておけば「スタートして2時間経過して、いまここは標高1500mだから、あと30分くらいで山頂だな、そのあと2kmでエイドだな」とわかります。だから僕は「経過時間」と「心拍数」、「標高」を同じ画面に表示されるように設定しています。
内坂: 海外ではレースコースがGPSデータで公開されていることが多いけど、国内ではまだまだだよね。僕ははじめてのレース、そして距離の長いレースなら、必ずGPSデータを自分で作って入力しておくよ。大会によっては必ずしもマーキングが親切丁寧とは限らないから。そのGPSナビで何度も道迷いせずに助かってる。

地元の選手が「ごめん」

大瀬: 《レユニオン》も道迷いしやすいんですよ、特に町のなかで。地元の選手と一緒に走ってて町に入ってロストしちゃった、相手は「こっちだよ」って自信を持って言うわけ、GPSを見るとそっちじゃない。「違うぜ」って言うと、「いやいや、絶対にこっち」。ついて行ったら、案の定行き止まり。ほらみろ、僕のGPS通りに進むと大正解、って当たり前なんだけど。「ごめん、ごめん、GPSすごいな」って感心してる。せっかくGPS時計を持っているんなら入力しとけよ、ですよ。
内坂: それとエイドなどをPOI登録しておくといいよね、「この方向に、あと○km」って表示されるから、おっと、まだ距離があるから水は大事に飲まなきゃ、とか、計算できる。GPSナビとPOI 登録、このふたつで大安心。なんだけど・・・
大瀬: え、どうしたんですか?

ゼッケンに裏に目標通過タイムを

内坂: 5月に100kmレースがあったんだよ、GPSコースデータも作ったし、エイドもPOIで入力しておいた、なんの問題もないはずなんだけど、実は大失敗。全部のエイドをPOI 登録すればいいものを、めんどっちいから時刻制限のあるエイドしかPOI しなかった。で、17時が関門っていうエイドにすっごい早く着いちゃった、「お、今日は調子いいじゃん」なんてのんびりしてたら、「ウチサカさん、なに遊んでいるんですか、17時関門のエイドは次ですよ!」。えええ! 必死で走ったけど、それは12km先、間に合わなかった。
大瀬: あはは、やりましたね。僕はそんな失敗をしないように、POI 登録するときに、POI の名前を制限時刻や標高の数値にしてますよ。それと、エイドの関門時刻や目標通過時刻をゼッケンの裏に書いておきます。以前は腕にコース標高図やエイド情報の記載されたシールを貼ってたけど、あのシールって汗ではがれちゃって、読めなくなっちゃう、だからゼッケンの裏。最近の海外のレースでは最初からそんなのがゼッケンにプリントされてますよ。

心拍数はコミュニケーション

内坂: さっき、レースが始まったときには心拍数をチェックして、体調を把握するって言ってたけど、レース中盤でも心拍数を見ることあるの?トップ連中は脇目もふらずばんばん飛ばす、ってふうだけど。
大瀬: いや、見ますよ。心拍数は一緒に走っている選手とコミュニケーションの役に立ったりします、「いま心拍数いくつ?」とか。答えを聞いて、なんだ、コイツけっこう余裕ないな、なんてわかっちゃう。その逆もあって、焦ったりもしますし。それにサロモンの選手はたいていスントを使っているので、「あ、その新型、どお?」とかね。そしてレース終盤になってくると、どうしたって疲れてきて心拍数が上がらない、というより下がってきちゃう。速く走りたいけど走れない。たいてい120kmたあたりが僕の勝負どころ、辛くなるところです。ここはペースを維持するというより、むしろぺースを上げる気持ちで走ります、上げるつもりで走らないとペースを維持できない。そしてがんばって走って140kmくらいで復活してくる、って感じかなあ。だから心拍数表示はとても大事。正確な測定はもちろんだけど、バッテリーも長く保ってほしいですね。

世界トップ選手たちは速いし強い

内坂: 最近の大瀬のウルトラレースの展開を見てると、スタートからトップ集団についていってるよね、後半になると少し下がってしまい、100マイルを終わってみるとひと桁の後半、あるいは10番代という成績だよね。最初はもう少しペースを落として、後半に追い上げるという作戦は?
大瀬: たくさんのレースに出たし、さんざん痛い目にも遭ったおかげで、いまは出場する選手の顔ぶれを見れば、だいたいどんなレース展開になるかわかります。それにあわせて戦略を立てますが、いま、世界のトップ連中は速いし強い、絶対に途中で崩れません、最後まできっちり走り切るんですよ。だから5番以内を狙うなら、後からついていって、順位が落ちてくるのを待つ、という作戦はまったく通用しません。最初からトップ連中と同じペースで走らなきゃいけない、彼らと互角に戦えるようにパフォーマンスを上げるしかないんです。だから、日頃の心拍数トレーニング、累積標高、合計運動時間を大事にしています。

絶対に道に迷わない

内坂: え、合計運動時間って? 
大瀬: 結局、ウルトラトレイルって、長くカラダを動かし続けることでしょう。だから山を走ったり、登ったりするだけでなく、自転車を漕いだり、プールで泳いだり、そんなことも役に立ちます、もちろん筋トレも。「ムーブスカウント」ではどんな種目でも運動の合計時間が月間とか週間の単位で表示されます。僕は週に12時間は超えたいなあ。そう、王滝村での山奥に入ってのトレイル整備、これも計算されます。あ、内坂さん、山で道に迷ったことあります?
内坂: あはは、ないよ。だって、走り出すときにスントを起動させておけば「トラックバック」と言って、スタートからそこまでのルートをそのまま逆走ナビしてくれるし、「ファインドバック」を選べば、スタート地点の方向と距離が表示されるじゃん。真っ暗闇でもホワイトアウトでもまったく心配なし、絶対に道迷いしない。
大瀬: 最近、香港のレースに出ることが多いんですけど、香港の町ってごちゃごちゃしてておもしろいんだけど、深入りすると迷路そのもの、ここはどこ? 宿に帰れないことがあるんですよ。そんなときにその「ファインドバック」と「トラックバック」に助けてもらいます、レース以外でもスントは役に立ってくれてます。

もうバッテリー残量を心配する必要はない

最高のスポーツウォッチを求めるアスリート向けに設計された、マルチスポーツGPSウォッチ。Suunto 9 では、最長のバッテリー寿命を提供 - GPSを使用した状態で最長120時間の持続時間。また、スマートアラーム機能を搭載したバッテリー寿命管理システムにより、必要なだけ確実にバッテリーを持続させることができます。頑丈なSuunto 9は、長く厳しいトレーニングやレース向けの製品です。極限の厳しい条件下で数千時間のテストに合格しています。

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大瀬和文(中央)
中学・高校・大学と箱根駅伝に憧れて陸上競技部に所属し日々ランニング漬けの毎日を過ごす。社会人になってからは健康維持程度に走っていたが、雑誌「TEAM TARZAN」に応募しトレイルランニングを始める。100kmや100mile等超長距離を好み、世界各国の大会で活躍する日本を代表するトレイルランナー。 現在長野県木曽郡王滝村の地域おこし協力隊としてトレイルランニングなどのアウトドアスポーツを活かした村おこし行なっている。

内坂庸夫(左)
マガジンハウスの雑誌『Tarzan(ターザン)』に創刊から携わる編集者。2005年から毎号トレイルランニングを連載し、誰もが楽しめるアウトドア・アクティビティとしてその魅力を伝えている。2008年からは『UTMB(ウルトラ・トレイル・デュ・モンブラン)』を継続して取材、同時に多くの日本人選手のサポートも行っている。さらに最近は、超長距離レースに向けて、自身も実践している『マフェトン理論』(心拍数トレーニング)を提唱。日本のトップアスリートに影響を与えているほか、市民トレイルランナーに向けた講習会も開催している。

藤巻翔(右)
世界中の山を旅し、山岳ランナーの姿を撮りつづけている山岳写真家。アスリート以上の体力を求められることも度々。大瀬和文、内坂庸夫とは世界各国で写真を撮り、ドラマを共有している。